BUHIXの日記

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【メモ】Pep Guardiola: The Evolution その4

 

  今回は偽インテリオール(偽インサイドハーフ)の誕生についてメモしておきます。

 

偽インテリオールはカウンター対策だった?

 偽インテリオールとは、サイドバックが中央に入ってインサイドハーフ(インテリオール)のようにプレーすることです。バイエルン・ミュンヘンのアラバがこの役割を果たしていたことは非常に有名です。

 私はあまり海外サッカーを見ていないため、この言葉を知識としてしか知りませんでした。だから偽インテリオールの目的を「ビルドアップを楽にするため」あるいは「SBのいわゆるインナーラップ」と思い込んでいたのですが、どうも元々の目的は違ったようですね。

 グアルディオラが偽インテリオールを思いついた瞬間(?)の記述を見てみましょう。

 

'Get me!’ cried Pep, his eyes bright, a grin flashing across his face. ‘The flag bearer for midfielders — playing with five strikers! My whole life defending the idea that midfield is so vital, that the key to winning football comes from the guys in the middle who control the game . . . and now I’m powering up our attack line because of how many strikers we have and need.

意訳:「聞いてっ♪」とグアルディオラは叫んだ。その目は輝き、笑みが満面に浮かんでいた。「ミッドフィルダーの旗手(アンカーに置いたゲームメーカーのこと?)を——5人のストライカーと一緒にプレーさせる方法を思いついたんやて! わっちはサッカー人生の中で中盤がどーらい大事やと考えとった。中盤で試合をコントロールする奴らが勝利の鍵を握っとるんや、って…でも今のわっちは、うちに何人のストライカーがおるか、何人のストライカーが必要かに応じて前線の人数を増やしとる」

 

 グアルディオラが何かを思いつきました。どうも多数のFW(ストライカー)を同時に起用する方法について考えていたようです。続きを見てみましょう。

 

But, be clear, it’s not just using strikers for the sake of it. This has no relationship to the day Madrid beat us 4-0 in the semi-final. That night I used four forwards but with the full backs “open”. That was where I screwed up because we were defending with two central midfielders and two central defenders which meant it was impossible to defend against Madrid’s counter-attacks.

意訳:「でも、えか? ただストライカーをたくさん使うだけじゃないから、えか? わっちがいま思いついたアイデアは、チャンピオンズリーグの準決勝でレアルにチンチンにされた時のやり方とは全っ然関係ないんやお。あの夜わっちは4人のFWを使ったんやけど、SBがサイドに『開いた』ままだったんやて。そこはわっちが大失敗してまったとこで、うちはボランチ2人とCB2人で守っとったわけやに。そりゃレアルのカウンターを防げるわけなかったわ」

 

 状況に応じて4人も5人もFWを使おうと考えているグアルディオラですが、いつも上手くいくわけではありません。レアル・マドリードのような強い相手にはカウンターでボコボコにされてしまうこともあります。

 ただ、そこで「じゃあやめよう」と思わないのがやはりグアルディオラの只者ではないところなのでしょう。彼は「どうすれば同時に多数のFWを起用できるのか」を考え続け、やがて「SBの位置を修正すればいいのではないか」と気づきました。さらに続きを見てみましょう。

 

This is totally different because it all hinges on the two full backs who, when possession is up the pitch, close in tight to the organising midfielder to form a line of three which protects against counters.

‘With this “security system” we can use five forwards because they’ve got their backs properly covered.

意訳:「わっちが思いついたやり方はあの時とまるっきり違うんやお。何が違うかって言うとSBやね。もうSBの動きに全部かかっとるの。うちんたが相手を押し込んどる時には、SBがアンカーのすぐ近くに寄って3人でラインを作るようにするわけ、えか? これが相手のカウンターを防いでくれるんやね、えか?

 ほんでこの"セキュリティ・システム"のおかげで5人のFWを使えるようになるんやて。後ろをしっかりカバーしてもらえとるもんで。『5人使いたい』とか『無理して5人使う』じゃなくて『5人使える』になるんやて、えか?」

 

 というわけで、グアルディオラが思いついた「5人のFWを起用する方法」とは、「両SBを中に絞らせてカウンターに備える」ことでした。おそらくこれが偽インテリオールの発祥だと思われます。SBが内に絞るのはビルドアップの局面ではなくその後、つまり自分たちが相手を押し込んだ時にカウンターに備えるためだったんですね。

 

 野澤がSBで試合に出ていた頃に「偽インテリオールなのかもしれない」と書きましたが、彼は別にカウンターに備えて中に絞っているわけではなかったので、(本来の)偽インテリオールではないと思います。おそらくビルドアップを楽にするのが目的だったのでしょう。

 

 ちなみに、攻撃を分厚くする方法は「最初から多数のFWを使う」ことだけではありません。例えばSBやWBが攻撃参加するという方法もあります(体力的な負担は大きくなりますが)。また、カウンターに備える方法は「SBが内に絞ること」だけではありません。SBが攻撃参加している場合などは、MFの誰かが残るべきでしょう。結局「攻撃の枚数を増やしつつカウンターに備える」ことが出来ればいいわけで、具体的なやり方は各チームで変わってくると思います。え? 今年の岐阜はSBが攻撃参加した上にMFも残ってない? まあいいじゃないその話は。

 

 以上、海外サッカーに詳しい方にとってはもしかしたら常識だったかもしれませんが(笑)、私にとっては大発見だったので記事にしてみました。

 

余談

 この記事で触れる余裕はありませんでしたが、「5人のFW」はいわゆる「5レーン理論」とか「中盤の空洞化」に繋がってくるのだと思います。サッカーは攻守が一体となったスポーツであり、流行の新戦術もどこかしらで必ず関係し合っているのでしょう。

 

 5レーン理論や中盤空洞化の話はこちら

 

本書の日本語訳はこちら

グアルディオラ総論

グアルディオラ総論

 

 

BUHIXが中二病発症して買ってしまった英訳はこちら(本当の原書はスペイン語だと思います) 

Pep Guardiola: The Evolution

Pep Guardiola: The Evolution