BUHIXの日記

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【再読】3バック戦術アナライズ

再読に堪える書き手

 『3バック戦術アナライズ』をもう一度読んでみました。初読時のレビューには「読者はサッカーの話に興味があるんだからヨーロッパ旅行記は要らねぇ」とか、ちょっと馬鹿にしたようなことを書いてしまいましたが、天に唾する話だったかもしれません。

 再読してあらためて思ったのですが、やはり日本人評論家の中で西部謙司レジェンドですね。何度でも読めるし、読みたいと思わせる力を持っています。

 とにかく、説明が分かりやすいです。「説明が上手すぎて、却って大したことを言っていないと思われる」タイプの書き手なのかもしれません。棒人間*1を使った図解なんか、本当に上手いと思います。

 

空海は動画編集も上手いはず(?)

 どこが上手いのか、他の書き手と何が違うのかと言えば、おそらく局面の切り取り方です。「途切れない」ことに特徴があるサッカーというスポーツの中で、重要な一瞬を見抜き、切り取る能力。そこが優れているから、西部さんの説明は分かりやすいのでしょう。

 今は誰でも簡単に動画が編集できますから、西部さんの棒人間図解と同じくらい分かりやすい動画を作れる人だってたくさんいるのかもしれません。でも、紙に印刷された図だけで同じ説明効果を挙げられる人がどれだけいるでしょうか。

 それはやはり「本当に要点が分かっている」人にしかできない芸当だと思います。別の言い方をするなら「弘法は筆を選ばず」というか、「本当に要点が分かっている人はどんなツールでアウトプットしても上手い」ということなのでしょう。

 

 ……西部さんも完全無欠なわけではなく、実は文章力がちょっと怪しいんですけどね(笑)。少なくともこの本を読む限りでは、文章の繋がり(主張と根拠の関係)が分かりにくい箇所があったり、短い間隔で同じ接続詞を使っていたりします。

 でもまあ、そこは大した欠点ではありません。西部さんの文章を読んでいると、ブログ界隈でよく聞く「文章は上手くなくていい」という言葉の意味を実感します。「中身」あるいは「伝えたいこと」があれば、表面が小綺麗かどうかなんてそこまで大切なことではないんですよね*2

 

3バック戦術アナライズ

3バック戦術アナライズ

 

 

メモ 

以下はただのメモ書きです。後で追記していくかもしれません。

  • メキシコ代表の分析は特に興味深かった。ボールを「持っている」のか「持たされている」のかは所詮、気の持ちように過ぎない。アイデアさえ見えれば「持たされている」とネガティブになる必要はない。「個の力が足りない」という結論に飛びつく必要もない。
  • 崩し方のアイデアについても具体的な記述があって、例えば2014年のメキシコは「FWのフリックに合わせて後列の選手が飛び出す」パターンがめちゃくちゃ上手かった、とのこと。
  • クライフ系のチームではアンカーが重要。大木監督をクライフ系に分類していいかどうかは分からないけど、岐阜もアンカー庄司が一番重要だよな。
  • ボールホルダーにプレッシャーがかかっていることを前提に「前がかりの守備」。目の前の相手をマークしつつ、隙あらばもう一列向こうの相手を潰しに行く「ハーフ&ハーフの意識」。
  • 「5レーン」や「ハーフスペース」という名前は付いていないが、それに相当する考えは2014年の時点で知られていた。バイエルンがサイドのトライアングルの組み方を変えてきた(ウィングを大外ではなくハーフスペースに置くパターンが出てきた)とか、メッシはボランチの横でパスを受けるとか*3
  • アトレティコが4-4-2をマイナーチェンジして復活させた。2トップの守備負担がより重くなっている。具体的に言うと2人のFWが相手ボランチのマークも担当するようになった。バルセロナ戦ではFWがインサイドハーフをマークすることすらあった。
  • ビエルサオシムはいいチームを作る割にタイトルに恵まれない。選手に負担のかかる戦術を採っているため、息切れするのだと言われている(うちの大木先生もプレーオフでは勝てなかったしなぁ)。

 

【関連記事】

*1:もっとちゃんとした呼称があるのかもしれないけど分からない(笑)

*2:プロのライターと「所詮アマチュア」という逃げ道のあるブロガーを同列に置いたら、却ってライターに失礼なのかもしれませんが……。

*3:メッシがボールを受ける場所については、この本が刊行される前から知られていた。